難関大学に合格させる有名塾

難関大学に合格させる有名塾

有名な教育評論家、おおたとしまさ氏の著書「進学塾という選択」(日経プレミアシリーズ)では「東大にいちばん近い教室」として以下の6つの塾が選ばれている。

1 鉄緑会 てつりょくかい
2 平岡塾 ひらおかじゅく
3 SEG えすいーじー
4 グノーブル
5 成増塾 なりますじゅく
6 研伸館 けんしんかん

以下、それぞれについて「進学塾という選択」から一部を引用し、実際の取材から得た情報も加味してコメントする。

https://kosotatu.jp/名門塾とは?/

【鉄緑会】東大理Ⅲ合格者の約半数を占める

1983創立。東京と大阪に校舎がある。東大合格者数が多く、中でも理Ⅲ、文Iと言った、東大でも最難関の学部に毎年大量の生徒を合格させることで知られている。
東京校の高3の在籍数に対する東大合格者の比率は例年50%に迫る。国公立医学部や慶應医学部の合格者も多数とされる。

指定校制を採る。指定校は一定期間ごとに見直される。2022.3.1.現在の指定校は以下14校。
開成、桜蔭、筑駒、麻布、駒東、海城、筑附、豊島岡、女子学院、双葉、渋幕、渋々、聖光学院、栄光学園。

講師はほぼ全員が東大の学生。特に理Ⅲ、文Ⅰの学生が多い。彼らが文字通り「後輩に教える」ように受験生を指導する。1回の授業は3時間。しかし、必要な学力が身についていない生徒には何時間でも居残りをさせ、個人指導するなど、かなり教育熱心とされる。
東大に余力を持って合格することを目標に、逆算して作られた6年一貫のカリキュラムと完成度の高い教材も有力な武器である。

★レギュラーコース15名まで。レギュラーコースは東大理Ⅲを目指す者が多く在籍。
★オープンコース25名まで。オープンコースは理Ⅲ以外の志望者が多い。

【コメント】

鉄緑会の指定校になっている学校に在籍していて、大量の宿題をこなせるなら、中1の時からこの塾で頑張ればかなりの確率で【それでも5割未満だが】東大や医学部に合格できるはずである。

学生が講師なので教え方は下手な場合も多いが、それでも東大に多くの合格者を出せるのは、授業を受ける生徒が「どんなに下手な教え方でもとりあえず理解できる知的ポテンシャルと大量の宿題をこなす体力を持っている」からであると考えられる。つまり、逆を言えば、それだけの知的ポテンシャルと体力がない生徒が鉄緑に通っても良い結果が出ないことは当然である。現に宿題の量はかなり多く、学校の授業中にも内職しないと追いつかないとも言われ、脱落者もかなりいる。

以上、一言で鉄緑会の特色を言えば「元々東大にうかる知的ポテンシャルと体力を持っている生徒だけを指定校制度で早い時期に囲い、徹底的に鍛えて東大に受からせる塾」ということになる。繰り返すが、知的ポテンシャルがそれほど高くない生徒や、ポテンシャルはあるが出遅れた生徒や大量の宿題をこなす体力のない生徒は「お呼びでない」ということなのでくれぐろも注意するように!

  1. https://www.tetsuryokukai.co.jp/

 

【平岡塾】英語一筋で昔ながらの文法重視

1965年創立。渋谷。
指導方針は「英語を習得するならまず日本語を鍛えよ」という、至ってシンプルなもの。

じゅうたんの部屋にローテーブルが並び、床に座る形で授業を受ける。ジュースやおにぎりを食べながら授業を受けてもよいなど、自由な雰囲気。

「やる気にさせます」ではなく「やる気のある人だけ来てほしい」というスタンス。鉄緑会と並んで都内の有名進学校に在籍する生徒が通う塾として有名だが、入塾テストや指定校制度はない。入るのは簡単だが続けるのが難しいと言われる。

モットーは「本物の英語力を身につければ、受験英語なんて簡単にクリアできる」ということ。使用している教材は数十年ほとんど変えておらず、中1で「ドンキホーテ」を読むとのこと。

【コメント】

パンフレットには「東大合格80%以上」と書いてあるが、事務に問い合わせてみたところ、驚いたことに受験生の合否調査は行っておらず、この数字は何の根拠もないことが判明した。「東大合格80%以上」は明らかに詐欺的な表示である。

この塾は文法重視を謳い、昔ながらの文法の問題を沢山解かせるので細かい文法の知識が増え、文法には強くなるかもしれない。
しかし使用しているテキストが昔からほとんど変わっていないため、内容的に古過ぎる授業は答え合わせが中心で、解説がほとんどないので、自主的に調べることをいとわない性格か優秀な家庭教師をつけるかしないと継続は難しいだろう。現にかなりの生徒が途中で脱落し、中学で入塾した者の中で大学受験まで続ける人はごく少数とされる。

https://www.hiraokajuku.co.jp/

 

【SEG】文化としての数学を広めたい
1981年創立。新宿。
基本理念は「学問を楽しむ」

名物講座「数学エクストリーム」の受講生を中心に、日本数学オリンピック本選出場者を多数輩出する。
「数学エクストリーム」とは、特に数学が好きな生徒が受講する授業。いきなり定理を教えてもらうのではなく、様々な数学的実験を行い、その結果から自分たちで定理を発見するという、いわば数学的実験教室。

高2までは受験を意識せず大学に入ってからも役立つカリキュラムが基本。最初から成果を求めるのではなく後で成果が出やすい土壌作りが大切と考える。この考え方は多くの名門中高一貫校の考え方と一致する。

2000年には英語多読のクラスも開講。
生徒のレベルに合う英語の原書をひたすら読む「多読」と、ネイティブスピーカーによるオールイングリッシュの授業が基本で、特にリスニングに強くなる。指定校制度なし。入塾テストはあるが9割は合格するとのこと。

コメント
文字通り「数学好き」の生徒のための塾。数学が得意で、大好きという生徒なら知的好奇心を大いに満たしてくれるだろう。反面、そこまで数学が好きでなかったり数学が得意ではないという生徒には向いていない。

英語はただひたすら「多読」をやらせる(文法も一応やるとはいっているが簡単な問題を解かせて答え合わせをするだけ)ネイティブのように、文法はわかっていなくても、英文を読む経験値を増やすことで自然に英語を身につけることを目指す。これは、受験英語仕込みの英語力では海外の学会で通用しなかったという、設立者古川氏の個人的な苦い経験がもとになっている。この点、文法をひたすら重視する平岡塾のやり方とは真逆である。しかし、文法を軽視するやり方は、生まれた時から常に英語をシャワーのように浴びるネイティヴスピーカーならまだしも、物理的に限られた量の英語にしか触れられない日本人の生徒に有効かどうかはかなり疑問である。生徒によって、合う、合わないが大きく分かれることになるだろう。しかも、SEG自身認めているように文法や構文を重視しないやり方は英語の学力を高めるのにかなり時間がかかる。「SEGのやり方を信じて長年やって来たが結局うちの子には合ってなかった」と気づいた時にはもう手遅れになっていることすらある。やはり、駿台に代表されるような構文や文法重視の方法の方が、日本人には安心できると言えるのではないか。

https://www.seg.co.jp/

 

【グノーブル】有機的につながった知を身につける
2006年創立。比較的新しく、中高一貫校生向けの大学受験進学塾の注目株的存在。

開成、麻布、筑駒、駒東、桜蔭、女子学院、学大附属などの生徒が通う。
東大、国公立・慶應医学部に合格者を出す。
校舎は新宿、渋谷、お茶の水など。

講師が心掛けていることは「知的な磁力を持つマグネット」と「正しい方向を示すコンパス」の2つになることだという。前者は、生徒たちが「この先生についていきたい!」「授業が楽しい!」「信頼できる!」という気持ちになれる時こそ、勉強は面白く、充実感が味わえ意欲的に取り組めるものになる、という考えから生じる。後者は「生徒たちが目指す学校に合格し、そこで活躍できるようにナビゲートするとともに、信頼できる相談相手として、一人ひとりをしっかり見つめながらともに歩いて行きたい」という意味。

コメント
近年、生徒数を大きく増やしている、勢いのある塾。設立者の中山氏はサピックス高校部であるネクサスから独立した元英語講師。英語の授業はひとことでいうと「英文を頭からどんどん訳していく直訳方式」で行われている。文法構造を分析しながら読み進めるオーソドックスな方法ではないので、生徒によって合う合わないははっきり分かれる。 鉄緑会や平岡、SEG等の有名塾に通う生徒層とほぼ同レベルの学校の生徒が多い。その意味で「鉄緑のコピー塾」と言われることもある。

https://www.gnoble.co.jp/

 

【成増塾】名門校以外からも東大、医学部等の難関大学合格者を出す

1996年、板橋区成増で創立。現在は高田馬場、下高井戸、西葛西、白金台を加え、計5校舎。
入塾テストも指定校制度もない。
「入塾当初は成績が良くなくても、本人のやる気さえあれば短期間で本人もびっくりするほどのスピードで成績を伸ばすことがしばしばあるから」という考えに基づく。「苦手な科目でも教え方が上手いプロ講師の手にかかればウソのように成績が上がり得意科目にできる」という、誰にでも起こりうる経験を具体化することを目標にしている。

鉄緑、平岡、SEG、グノーブルに多数が在籍する開成、桜蔭、筑駒、等の生徒以外の学校の生徒が多いことが特色。
鉄緑の指定校の生徒も在籍するが、指定校以外の、武蔵、早稲田、白百合、暁星、城北、巣鴨、芝、攻玉社、吉祥女子、立教新座、淑徳与野、果ては偏差値50前後の無名校まで様々な学校の生徒が在籍する。

特色は少人数制と指導経験の豊富なプロ講師だけが授業を行っていること。
ひとクラスの生徒数は平均4名前後。定員が3人、4人のクラスもある。
プロ講師が質の高い授業を提供することが、無名校からも難関大学に合格する秘密だとのこと。

【コメント】
難関大学を目指す生徒なら誰でも入塾することができ有名校以外の生徒も多数通う。各講師に自由に自分のスタイルで授業を行わせているので、生徒は自分に合った講師を見つけるために体験授業を受けなければならないが、自分に合った講師が見つかれば成績はかなり伸びるだろう。講師はLINEやメールで生徒からの質問を何時でも受けてくれるという。おおたとしまさ氏の別の著書「塾歴社会」(幻冬社新書)の中では「鉄緑会へのアンチテーゼ」を基本的なスタンスとしている塾として紹介されている。生徒数も少ないため東大合格者数は例年10名前後だが、慶應医学部や東京医科歯科大、一橋、東工大、早慶にも毎年一定数の合格者を出しており鉄緑会の指定校以外の生徒にとってはひとつの有力な選択肢になりうるであろう。

https://www.narimasujuku.net/

 

【研伸館】灘高生が最も多く通う塾

元々は大学受験用の現役高校生向け塾として1978年にオープン。1993年、中高一貫校の中学生向けに中学生課程を開設、中高一貫生向け指導を開始した。現在、西宮、京都など近畿地域に10校舎。灘校生が最も多く通う塾と言われている。
東大、京大、大阪大、神戸大への合格者が多く、中でも医学部合格者が多いのが特色。

スローガンは「余裕で、難関大学へ
進度が早く、英語と数学の最も早いクラスでは中2から高校内容の学習に入る。ただし、途中からも入塾できるように、進度の異なるクラスを多数設置している。

講師はほぼ全員専任。教室授業を録画しているので、欠席しても抜けができない。
受講生が自分の都合の良い日時で、自分にぴったりあった進度で学習できるように、映像授業とコーチングを組み合わせた授業や反転授業を行うなど、意欲的に取り組む。
2013年からは奈良の人気進学校、西大和学園の要請を受け、研伸館専任講師が、放課後の授業で、研伸館の授業を提供している。

コメント
スローガンである「余裕で難関大学へ」からは鉄緑会を連想させる。しかし、途中入会組にも進度の遅いクラスを用意するなど、「中1の最初から入らなければダメ」という鉄緑会と違い、サービス面でも大変きめ細かい配慮を行う。講師が全員専任講師という点でも、学生が講師を勤める鉄緑会とは一線を画している。プロ講師は指導技術が平均的に高く、一貫した指導を期待できる。その他、動画、反転授業、コーチング等、最新の指導手法を組み合わせて難関大学受験生のかゆいところに手が届くかのごとく万全のサービスを提供している。首都圏の受験生としては東京への1日も早い進出が待たれるところである。

https://www.kenshinkan.net/