⭐️難関大学専門塾⭐️

⭐️難関大学専門塾⭐️

著名な教育評論家おおたとしまさ氏が「進学塾という選択」(日経プレミアシリーズ)の中で「東大に1番近い塾」として鉄緑会、平岡塾、SEG、グノーブル、成増塾の5つを上げる。これらは難関大学を目指す生徒に少人数制指導をしている点で共通している。ここではその5つの塾にベリタス、栄光会も加え、それぞれについて忌憚のないコメントをしていこう。

⭐️鉄緑会 筑駒、開成、桜蔭など「東大合格ランキング上位校」の生徒を「指定校生」として集め、たくさんの東大合格実績を出している塾。講師は鉄緑会出身のOBで、現役東大生が大半を占める。「余裕を持って東大に合格する」ことを目標にしている。「地頭が良い生徒を集め東大に受からせる」というのが鉄緑会の基本的なポリシーである。鉄緑の指導内容を見ていこう。指導の特色は「徹底した先取り学習と大量の宿題」である。カリキュラムは他塾よりかなり速く、例えば英語は「中1で中学英語の全範囲をひと通り終える」「中3までに高校数学をひと通り終える」というペースである。速いばかりではなく学習したことを定着させるために大量の宿題を出す。テキストは分厚いが、重複や無駄もかなり多くみられる。なおかつ掲載されている問題が古い(1990年代の入試問題が大量に掲載されている)また、英語などは「これやる意味ある?」みたいな短文を大量に暗記させるなどプロの目から見ると疑問視せざるを得ない部分も目立つ。つまり、テキストの編集方針はひと言で言えば「質より量」である。鉄緑に通う生徒は「学校の授業中に内職しなければ鉄緑の宿題が終わらない」と言われるが、鉄緑で出されている宿題の量を考えるとそれも仕方ないと思える。教えているのは(東大生ではあるが)ほとんどは指導経験が少ない学生なので授業に「分かりやすさ」を期待してもダメである。「自分で解ける」のと「分かりやすく教える」のは別の能力で、東大生は「自分では解ける」が「分かりやすく教える」ことを苦手にすることも多い。勉強を教えることに関しては素人の東大生が講師を務める中、実績を上げるには大量の宿題を課さなければならないという理屈の上に成り立つのが鉄緑の指導システムなのである。以上のようなことから考察すると、鉄緑に通って伸びるのは「大量の宿題を自力で解き、かつ、宿題の中から大事なポイント自分で見出せる生徒」ということになる。鉄緑の指定校以外の生徒が(あるいは指定校でも下位の学力の生徒が)無理して鉄緑に入っても挫折する可能性の方が大きいのはそのためである。「そうは言っても鉄緑から大量に東大に合格しているのは事実なのだから『必要悪』として内職をしてでも宿題をこなし鉄緑の授業についていくのが東大や難関医学部合格への近道なのでは?」と考える人も多いだろう。しかし(ほとんど知られていないことだが)鉄緑は「過年度生」も合格実績の中に含めている。「過年度生」とは「過去の年度に在籍した生徒」のことである。つまり現役時に鉄緑に通っていたが東大に受からず、浪人して東大に受かった場合、鉄緑はそれを鉄緑からの合格者として公表しているのである(鉄緑は現役時に鉄緑から受からず浪人した生徒に「合格調査」を行なっている)「それインチキだろ!」と思う人も多いだろうが「過年度生」を合格実績に含めている塾や予備校は沢山ある。大半の予備校が1度模試や講習を受けただけの生徒も合格者にカウントしていることは周知の事実である。以上からすると「鉄緑に入れば誰でも東大に行ける」と考えるのは短絡的な幻想に過ぎないことがわかる。鉄緑のシステムが合わないと感じたらさっさとプロ講師が分かりやすく教えてくれる塾に移らないと取り返しが付かなくなる。

⭐️平岡塾 渋谷にある有名な英語塾。御三家や上位の進学校の生徒を集める。パンフレットによると主な在籍校は筑駒、筑附、学大附属、麻布、武蔵、開成、桜蔭、女子学院、雙葉、等とのこと。絨毯敷の床に座らせて和式テーブルで勉強させるというスタイルを取る。1回の授業は3時間。平岡塾の基本ポリシーは「英語は日本語を通じてマスターすべきもので、しっかりとした日本語の基礎が大切」ということ。この点、最近流行りの「英語で考える=オールイングリッシュスタイル」の⭐️JPREP斉藤塾などとは真逆の立場に立つ。まず考えなければならないのは「難関大学に合格するには平岡塾のように『日本語を通じて英語を学ぶ』のが良いのか、あるいは斉藤塾のように『日本語を介さずに英語は英語で学ぶ』のが良いのか」という点である。この点、斉藤塾は「うちの塾で学べば英語で考えることができるようになるのでアメリカの名門大学にも合格できる学力がつく。東大も楽勝です」と謳っている。しかしこのような主張は東大の問題が「英語を日本語に訳せ」とか「日本語を英語に訳せ」とか「日本語で分かりやすく説明せよ」というように、大半が「日本語による表現力」を問う問題からなるという事実からすると明らかに「的外れ」である。例えば東大では英文の要約を日本語で書かせる問題が出るが、これなど「この英文は何が言いたいのかを日本語で簡潔に説明せよ」と問うているのである。要は、いくら英語で考え、英語をペラペラ喋れるようになったとしても自分が言いたいことを、的確に、簡潔に「日本語で」表現出来なければ東大を始めとする日本国内の難関大学に合格することは出来ないということである。そんなこともあり斉藤塾では大学合格者の実績をサイトで公表していない。斉藤塾の塾長は上智大卒でアメリカの大学でも教鞭をとったことがある。そのような経歴を活かして「英語をペラペラ喋れてアメリカの大学に入学できる学力」をつける斉藤塾を作ったのだろうが、そのような指導方針は、日本の難関大学に合格しようとする生徒にとっては「ズレている」ことは否めない(上智やICUくらいなら入れるかもしれないが。)話を平岡塾に戻そう。「英語をマスターするにも日本語力が不可欠」という平岡塾の方針は平岡塾の創始者平岡芳江によって打ち立てられたものだが、そのような指導方針は日本の難関大学、中でも東大を始めとする国立大学の入試に適合性があることは上述した所である。ところで平岡塾の授業はどのように進められるのだろうか。塾生には分厚い文法の本が渡され、宿題に大量のプリントが出される。そして授業は宿題の答え合わせに過ぎない事が多い。「1番の答えは(ア)です。2番の答えは(イ)です。3番の答えは、」と言った具合に淡々と授業が進められていく。解答に至るまでの思考過程が細かく示されることはほとんどない。つまり、生徒は大量の宿題を出されてそれを自力で解く中で学力を向上させるという点では鉄緑と類似しているのである。それゆえに鉄緑と同様「大量の宿題を自力でこなせる生徒は学力が上がるがそれが出来ない生徒は脱落する」ことになる。現に平岡では、とりあえず入塾はしてみたものの宿題をこなせない、あるいは授業が単に宿題の答え合わせである事に嫌気がさしてやめていく生徒が非常に多いことが知られている。さらに付け足すと平岡のテキストやプリントは「内容が古過ぎる」ことがしばしば指摘される。何しろ何十年も前に作ったプリントを今だに使っているのである。平岡は「まずバードランド・ラッセルなどの一流の哲学者の英文を読む事で受験を超越した英語力を身につける事ができる」と主張する。確かにラッセルを読む事も幅広い学力を身につけるためには必要かもしれないが、現実に東大を始めとする難関大学でラッセルのような大昔の哲学者が書いた英文がそのまま出されることはほぼ皆無である。現実の難関大学入試では現代という時代の問題意識を反映したタイムリーな話題(環境、遺伝子、人工知能etc)が中心に出されることは周知の事実であり、平岡の教材は「時代錯誤も甚だしい」と言われても仕方ないであろう(ちなみに選抜クラスではラッセルを終わったらNatureやDiscoverの掲載論文、大学入試の過去問の超長文(1500語前後)等を年間約50本こなすとのことである)なお平岡は「東大合格率8割」とパンフレットで謳っているが実際は生徒に対して大学の合否調査すらしていない。つまり平岡塾が宣伝文句に使っている「東大合格率8割」という数字には何の根拠もない。はっきりいうと詐欺である。

⭐️SEG  新宿に拠点を持つ有名な塾。数学の塾として有名であるが近年は代表者の古川氏のリードで「英語の多読の塾」としても知られるようになった。まず数学等理系科目について。SEGは「数学を好きになれば自然に数学の問題を解けるようになる」ことを理想としている。公式や解法の意味も分からないのに無理やり暗記する、などといった方針とは真逆の姿勢をとっており、数学好きには大変魅力的な塾であると言えよう。授業内容は大学数学まで及びかなり高度なことまで学習する。その反面、数学がそこまで好きでない生徒や苦手意識を持つ生徒にはハードルが高いであろう。ひと言で言えば「数学が得意な生徒向けの塾」である。英語の「多読指導」についても言及しよう。そもそも代表の古川氏が英語の多読指導を始めたのは、彼が海外の学会に出た時、受験勉強で身につけた英語力ではコミュニケーションが取れなかったという、古川氏自身の苦い経験に基づく。「英語のネイティブがやっているように子供向けの本から始めて楽しみながら勉強しなけなければ海外で通用する英語は身につかない」という古川氏の原体験が元になってSEGの多読指導は始まった。では多読指導はどのように行われるか。簡単に言えば「教室に来て一定時間英語の本を読んで記録をつける」だけである。「え、それだけなの?」と思う方がおられるだろうが、本当にそれだけである。最近は文法学習のコースも始まったようだが、基本的には「英書の多読」がSEGの英語指導の根幹を成していることに変わりない。では、効果はあるのだろうか?「効果はある。ただし色々な問題はある」というのが答えである。では「色々な問題」とは何か?まず第一に「多読指導は効果が出るまでにかなり長い時間がかかる」ということである。SEGは各学年の到達目標として英検を目安にしている。SEGが公表するところでは「高校1年生で英検2級」ということであるが、これは難関大学を目指す生徒のペースとしてはかなり遅いと言わざるを得ない。「英検2級レベルの読み書き聞き取りは中3の夏前には完全にできるようにする」というのが難関大学受験生として到達すべき目標である事は今や常識である。2番目に多読指導では英文を日本語に変換せずに読むことができるようになるが「文法的に正確な英文を書いたり文法問題を解いたりする力はほとんど身につかない」ということである。これは日本人が日本語を習得することを考えれば明らかである。日本人である我々は幼少時より、日本語で書かれた沢山の本を読んで知らず知らずのうちに日本語を身につけていく。では、我々は好き勝手に沢山の本を読むだけで日本の難関大学に合格する学力を自然に身につけることができるのか?答えは、ごく少数の例外を除いては「No」であろう。現に東大の国語で合格点を取るためには、日本人の我々であっても「文法的に破綻のない、理路整然とした日本語」で答案を書く練習を何回となく意識的に繰り返す必要があるのである。先述の通り日本の難関大学が今なお「英語を日本語に直す」「日本語を英語に直す」ことを出題の中心としており、なおかつ、英文法が重視されていることを考えるなら「多読」でそのすべてを賄おうとするSEGのやり方は甚だ不十分と言わざるを得ないのである。読者の中には「センター試験の時は文法問題が出されたけど、共通テストでは出さないのだから文法学習は今の大学受験では不要なのでは?」と思う人がいるかも知れないが大間違いである。確かに共通テストでは文法は出されないが、代わりに国公立の2次試験や私立大学では文法問題の比重はかつてより増えているのである。例えば東大はかなり難しい文法の「正誤問題」や語句の並び替え問題が出される。そしてこれらの問題は点数的にはかなり高い。合否のボーダーライン上の1点に多くの受験生がひしめき合う難関大学受験において「文法問題が分からなかった」のでは最初から合格を諦めているのと同じである。東大や他の難関医学部で出題される文法問題は決して「多読」をしていれば自然に身につくといったレベルのものではない。「多読」だけでは難関大学の文法問題やや並び替え問題に正解するための基礎学力、つまり英文を構造的に分析する力が身につかないのである。

⭐️ グノーブル 中山氏が2006年に設立した塾。2012年には中学受験用の塾も設立。新宿、渋谷を皮切りにお茶の水、たまプラーザ、横浜、と拠点を拡大。難関大学を目指す生徒が多数通う。グノーブルの英語の授業は一言でいうと、頭から英語を順々に訳していく「直読直解方式」。これは英語講師の中山氏が唱えた英文読解法で「返り読みせずに英語を読み進めることで速く読めるようになる」ことを目指す。では「直読直解方式」は英文読解の方法として英語指導者の間ではどのように評価されているものなのだろうか?結論から言うと「直読直解方式」は「然るべき英語学習をして来た者なら誰もが到達できるゴール」ではあるが「英文読解の基礎が確立していない者が実践しても効果がないばかりか有害になる」ということである。そしてグノーブルの根本的な問題は英文読解の基礎が確立していない者にも『直読直解方式』の授業が行われるという点である。以下、これを詳しく解説する。中山氏は英語講師として「英語スピード読解力」という著書を出しているがその中で一貫して「直読直解方式」を解いている。要は、英文を頭から順々に日本語に置き換えていくというだけのことである。しかし、大学受験で出てくるような複雑な構文を有する英文を読む時、英文読解の基礎が確立していないのに「直読直解方式」で読もうとしても英文の意味をとることができないことは誰しも経験している所である。「直読直解方式」で読んで意味が取れるのは「既に英語を正しく読める者」のみである。英文を正しく読めもしない者が「直読直解方式」に飛び付いても大学受験レベルの英文の意味はさっぱりわからないし、また、基礎力のない者がいくら「直読直解方式」を続けても学力が伸びないことは「まともな英語指導者」なら誰しも知る所である。では「まともな英語指導者」とは誰か?というと「キチンと英文の文法構造を分析していく力をつけてくれる指導者」に他ならない。「キチンと英文の文法構造を分析してくれる指導」を最初に提唱したのは⭐️駿台予備校の伊藤和夫である。伊藤和夫は著書「英文解釈教室」(1977年)の中で「これでもか!」というくらい「キチンと英文の文法構造を分析」することの重要さを解き、その一貫した姿勢から「英文解釈教室」は当時の「東大受験生のバイブル」とまで言われるようになった。伊藤和夫の指導法は「構文主義」と言われ、駿台予備校の英語授業はこの「構文主義」という基本方針に基づいて行われることになったのである。伊藤和夫の「構文主義」の影響を受けた英語講師は数知れない。そして、今でも「構文主義」を基本軸にして指導を行う英語講師は予備校界では多数を占め、「構文主義」はもはや「まともな英語指導者」であれば「常識」というレベルまで普及している。これに対して「いちいち構文とって読んでいたら時間がかかってしょうがない。共通テストに代表されるように今は『長文の時代』なのだから『速読』をしなきゃダメでしょ!」という反論をしてくる者がいる。そういう者に聞きたいのだが「ホームランを打てるようになるには、ただ闇雲に沢山のボールを打っていればよいのか?」ということである。答えは断じてNo!だろう。ホームランを打つにはまず、然るべきバッティングの理論を学び、それに基づいて正しいバッティングのための体の動かし方、タイミングの取り方等をキチンと学ぶことが大前提なのである。そのようなバッティングの基礎をキチンと学んでもいないのにただ闇雲にボールを打つような練習は全く無意味である。英文読解の基礎を十分学んでいない者が最初から「直読直解」で沢山の英文を読んでいくという勉強法もそれと同様間違いなのである。では『長文の時代』にどのようにして「速読」の要請に対処するのか?答えは「正しく読めるようになれば自然に速く読めるようになる」ということであり、さらに「正しく読めるようになってから速読を意識した沢山の練習を積む」ということである。現に、先述した伊藤和夫も「構文主義の到達点は『直読直解』である」と言っている。伊藤和夫がいうように「英文を正しく読む力があるから前から読んでも意味がとれる」のであって「英文を前から読めば正しく意味がとれる訳ではない」のである。「いくら英語を読んでも成績が上がらない」と嘆いているものは以上のことを肝に銘じるべきである。では肝心のグノーブルの授業に対する評価は?というと、残念ながらあまり芳しいものではない。1番多いのは「グノーブルの授業は英文を前から日本語に訳しているだけ」というものである。だがこれは先述した通りグノーブルの創始者である中山氏が「直読直解方式」の提唱者であり、中山氏以下の英語講師が「ボス」である中山氏の方針に「右へ習え」をしている必然的な結果である。そしてグノーブルの場合の問題はまだ英文を正確に読める力が十分ついていないのに最初から『直読直解方式』でやってしまうことである。生徒の声でさらに多いのは「授業は答え合わせをしているだけで設問に対するキチンとした解法を教えてくれない」というものである。まあ、これはグノーブルで採用される講師のレベルを考えると仕方ないのかもしれない。ネットで調べるとグノーブルで採用される講師の時給は3200円である。そこら辺の個別指導塾よりは高いが4000円以上もらっている大手予備校と比較するとかなり低い。これでは「一流の講師」は集まらないのも頷ける。グノーブルの授業についてよくあるのが「河合や駿台の授業と比較するとグノーブルで教えている講師は素人のレベル」というものである。まあ、市場原理に従えば「良い人材は良い給料を出す所に集まる」というのは人の世の定めなのだから「河合や駿台ほど高い給料を出さないグノーブルに河合や駿台ほど良い講師がいない」のは致し方ないことなのである。ではそれほど高い能力のない講師が教える塾でなぜ東大に100人以上の合格者を出す事ができているのだろうか?一言でその答えを言うと「生徒の出来が良いから」ということに尽きる。グノーブルに集まっている生徒層は「鉄緑とほぼ同じ」か「鉄緑よりちょっと下」なのである。そういう出来のよい生徒達はどんな教え方をしても勝手に出来るようになってしまう。グノーブルには鉄緑のように入塾のためのテストはないがテストの点数で入れるクラスが違って来る。そして成績上位のクラスから沢山の東大合格者を出す、という「サイクル」を作り上げている。要は「グノーブルから東大に合格するのは最初から出来の良い生徒が大半」であり、ビジネスモデルとしては「ミニ鉄緑」と言った感じである。地頭が悪く学力が低い者がグノーブルに入っても学力が伸びる可能性はあまりない。グノーブルに入塾しようとしている生徒、保護者は以上の点をよく考えるべきである。

⭐️ 成増塾 1996年、板橋区成増からスタート。設立者の高島氏は代ゼミ講師をしていた経歴を持つ。都内5教室を運営。教育評論家おおたとしまさ氏の著書「塾歴社会」によると「アンチ鉄緑を看板に掲げる塾」との事である。この塾からは東大や国公立の医学部、慶應医学部などにはほぼ一桁しか合格していない。にもかかわらず有名な教育評論家がその著書であえて鉄緑会と並べて取り上げているのはそのユニークな指導方針によると考えてられる。指導方針の中で際立っているのは「アンチ鉄緑」の旗を掲げていること。「アンチ鉄緑」の具体的内容は、というと、鉄緑会のように、特定の学校に在籍する生徒だけを囲い込む「指定校制度」をとったり入塾のための選抜テストをしたりしないで鉄緑と同等以上の指導内容を実現することであるという。あえて鉄緑会の「指定校」に入っていない学校の生徒を獲得することを狙っているようだ。ここで「選抜テストをしないでどうやって難関大学向けの授業のレベルを維持するのか?」という疑問が生じるが「実際の授業を体験授業として受けてもらい『ついていけそう』とか『この先生の授業なら受けたい』と生徒が思った場合にのみ受講してもらうことでそれを実現しているのだという。それでも「一度だけの体験授業ではよくわからないのでは?」という疑問を持つ人もいるだろう。そこで最近では「お試し4回受講制度」というものを始めたようだ。「お試し4回受講制度」とは「正式受講する前に4回の授業を通常料金で受講できる」というもの。確かにこれなら生徒の学力と授業レベルのミスマッチは起こりにくいだろう。成増塾の最大の売りは「受験界最高水準のプロ講師が少人数で直接指導する」とのこと。成増塾によると「受験界最高水準のプロ講師が少人数制で教えるので大量の宿題を出さないでも難関大学に合格できる学力をつけられる」とのこと。ここら辺もかなり鉄緑を意識していると思われる。鉄緑が「大量の宿題」を出すことで生徒に学力をつけさせるのに対し成増塾は「大量の宿題など出さずにプロ講師の力量で学力をあげていく」ことを狙っているとのこと。確かに鉄緑のように学生が教えている塾では講師に分かりやすい授業を期待しても限界はあるだろうが、プロ講師なら「科目の本質」を理解させることに長けているだろうから宿題を大量に出さなくても生徒の学力を高めることは可能かもしれない。現に成増塾は鉄緑会のテキストなどを徹底的に研究しており「鉄緑を超える学力」を身につける生徒(中3で東大の問題を解いてしまう)もちらほらいるとのこと。だがそもそも、大手予備校でもない成増塾に本当に最高水準の講師など本当に集まるのか?という点は根本的な疑問として残る。この点、成増塾は他塾にないユニークな仕組みを取り入れてかなり高い水準の講師も採用できているようだ。「他塾にないユニークな仕組み」とは何のことはない、要するに大学では当たり前に取り入れられている「ゼミナール方式」の事である。「ゼミナール方式」とは大学教授がゼミナール(通常、ゼミ)を担当する時、教科書の選定から指導の仕方まで全て一任されているようなやり方をいう。だが、意外にもゼミナール方式を看板に出す塾はほとんど皆無である(東進ハイスクールの人気講師はゼミナール方式かもしれない。ちなみに、元祖は代々木ゼミナールだろう。だが、代ゼミは「イロモノ講師」を前面に出した展開が仇となり今や風前の灯であることは予備校業界では周知の事実である)。ほとんどの予備校や塾ではテキストが決められていて、講師はそれに従って授業をしなければならないが、成増塾では自分の作ったオリジナルテキストで自由に講師が授業をすることが出来る。確かにこのようなやり方だとやる気のある講師が集まるだろう。現に駿台予備校など大手有名予備校の講師の中にも成増塾のやり方に魅力を感じるものは少なからずおり、実際に成増塾で教えていたりする。また、小規模な塾にしては破格の時給であることも良い講師が集まる理由のひとつ。成増塾の講師募集サイトによると20代の若手でも1000万円以上(トップレベルだと2000万円以上)を手にすることが出来るという。「大手でも2000万はおろか1000万出すところなんてそうそうないだろうに、大手でもない塾が何で2000万円講師に払えるのか?」という疑問が生じるが、これは成増塾が歩合制を取り入れていることによる。要は「担当する生徒の頭数で時給がどんどん増えていく」ので生徒を集められる講師は1000万円以上いくのである。だが成増塾のサイトをみると「高給取り」は一部の人気講師だけだという。評判を聞いて見ると「最高水準」と言える講師もちらほらいるが「普通レベル」の講師も教えているらしい。結局、講師によってかなり当たり外れがあるのが実態のようだ。では「最高水準の講師」の講師にどうやってめぐり合えば良いのか、というと、これは生徒が体験授業を実際に受けて確かめるしかないようである。もっとも塾に問い合わせれば誰が人気講師なのかも教えてくれるらしい。さらに、塾としても「成増塾の講師は玉石混交」という世間の評価を気にして「推し」の講師を「スーパー講師」としてフィーチャーリングすることにしたようである。以上のように成増塾はかなりユニークなやり方をすることで医学部や東大にそこそこの実績を上げている塾なので、医学部や東大を目指すが部活や趣味と勉強を両立させたい、という生徒には有力な選択肢となるかもしれない。【追伸】成増塾の授業料は1科目、年間60回、各回120分で36万円位なので他塾と比べるとやや割高感があることは否めない。ただ、ひとクラスの人数は平均4人とのことなので目をつぶるしかないのかも知れない。